映画日記

海を飛ぶ夢 [DVD]

海を飛ぶ夢 [DVD]

尊厳死」がテーマ。これはむつかしいテーマだ。
良いとか悪いとかについて書くことは出来ない。この映画を見て書けることは「私だったらどうするだろう」「私が家族だったらどうして欲しいだろう」ということだけだ。
自分が当事者であったら。もちろん「死んだほうがマシ」と何度も何度も思うだろう。だけど、結局死ねないだろう。だれかが手助けして死なせてくれるといっても断るだろう。でも「死んだほうがマシ」とまた考えるだろう。そして家族や周りの人に「死んだほうがマシ」と本当に言ってしまい、「そんなこといわないで」ということを言ってもらうことで、自分の生きる意味を作り出すだろう。私はそういう卑怯者だ。だって、生きていてよかったと思うことはたくさんあるのだ。好きな人の温かさ(肉体的・精神的)に触れられたとき、素晴らしい人や映画や小説や音楽や芸術に出会ったとき。そういういくつもの瞬間や歓びに支えられて私は今まで生きてきている。それは変わらないような気がする。
私が家族であったら、当然だが死んで欲しいなんて思わないだろう。でも人間だから気分のいいときばかりではない、正直「いなくなっちゃえ」なんて思うこともあるだろう。だけど本当に「いなくなっちゃ」困るのである。
私の印象に残ったシーンは二つ。甥っ子が爺ちゃんを役立たずと言い放つ場面で主人公が甥っ子にある言葉を言うところ。もし甥っ子がこの言葉を本当にいつまでも覚えていたり、そのときにふっと思い出したりしたらと想像し、自分だったら思い出した瞬間に涙があふれるだろうなと思ったこと。
それと主人公が自分を責め立てる兄に向かって反論をして、一瞬お兄さんが「うっ」と言葉につまってしまう。だけどつまりながらも答えにならない答えをしてその場を離れていくところ。主人公の反論は正論だった。だけどその正論をお兄さんは認めてしまうわけにはいかないのだ、どんな答えもそこにはないと分かっていても、お兄さんは認めないことを貫かなければいけない。すべての人のために。
私もいつか老いる。必ず老いる。そのことについて私はもっと深く考えなければならないのだろう。


アンチョビ評価 ★★★★☆