テレビ映画日記

「THE MAN WITHOUT A PAST」

アキ・カウリスマキとは認識せずに録画していた。しかし、冒頭からのあまりに圧倒的な「映画感」に飲み込まれてしまい、途中で情報を補足してしまった。
まるごとすべてが素晴らしかった。子供の頃に見ていた「映画」のにおいがした。まったくの異文化は、まるでおとぎ話のようであるし、場面が変わるたびにいちいちすうっと暗くなったりするのがたまらなかった。「映画」を見ているという、わくわくとした感じを最初から最後まで味わうことができた。ここ最近、こんな映画ってあっただろうか?
遅ればせながら、この1本で、わたしはすっかりアキ・カウリスマキの虜になってしまったようだ。
話もとてもよくて、主人公は理不尽なことも一旦すべて受け入れるのだが、その後きちんと自分の頭でものを考え、流れの中で自分を再確立していく。そういった人間としての力強さみたいなものが、今は薄れてきているんだろうなぁとも思わされた。
自分の全部をなくして、それでも私は自分として再び立ち上がることが出来るだろうか?そういう強さを私は持ちたい。