「ワールズ・エンド(世界の果て)」 ポール・セロー 村上春樹訳

ワールズ・エンド(世界の果て)

ワールズ・エンド(世界の果て)

9つの短編集。
もちろん、表題の「ワールズ・エンド」は印象深いが、私はこのほかには2つの話が強く印象に残った。
「真っ白な嘘」と「緑したたる島」
特に「緑したたる島」は素晴らしかった。読んでいる間、私はむっとするプエルト・リコの空気を感じていた。むっとする空気の中で、少しずつ人生が死んでいく。そこに生きているのは本当の自分ではない。死んだ人生が新しい人間となって新しい生活を送っているのだ。当然そこにリアリティはないのだろう。きらめく島できらめきを失っていく若い二人。
ひきこまれた、そしていつかプエルト・リコに行きたいと思った。私が今想像しているプエルト・リコの空気を確かめるために。