読書日記

鈴木いづみ 1949‐1986

鈴木いづみ 1949‐1986

私が生まれた年に、鈴木いづみは足の小指を切断した。
鈴木いづみの著書は、ひとつも読んでいない。ただ、鈴木いづみ阿部薫の生活を映画化した「エンドレスワルツ」を数年前に見た。
ここ数日、なぜ自分が「エンドレスワルツ」を見ることになったのか、なんとか思い出そうとしたのだが、さっぱり思い出せない。なぜ、著書をひとつも読んだこともない鈴木いづみと、その演奏を聴いたこともない阿部薫の映画をわざわざレイトショーで見に行ったのか。ただ、映画はとても興味深いものだったし、あの映画は、私と映画という関係を少し変えたと思う。
この本は、いろいろな人が鈴木いづみについて文章を寄せたものだ。一人の人について、多くのひとの話を聞くと少し混乱する。この本を読み終えるのに時間がかかったのは、そのせいかもしれない。
まだ、うまくまとめられていないのだが、鈴木いづみ阿部薫は、本当に唯一無二の一対の生き物であったということは理解できた。小指を切断したことも、いづみいわく「お互いがわかりすぎた」結果のひとつにすぎなかったのだ。
鈴木いづみは、そんな相手と出会えて、きっと幸福だったのだろう。前歯をなんべんも折られても。そして、その相手を失って、きっと世界で一番の悲しみを背負ってしまったのだろう。