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「grace is gone」
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2008/11/07
- メディア: DVD
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大人である父親と大人子供のハイディ、そして子供のドーン。それぞれがところどころで見せる、不安や悲しみが興味深かった。
子供の前ではなんとか持ちこたえながらも、誰もいないベットの上で涙を流し、妻の声が残る自宅の留守電にメッセージを残し続ける父親。
父親のただごとならぬ様子から、何かが起こったと感じながらも「聞いてはいけいこと」にふたをして、もてあました感情を胸に夜の町をただ歩き回るハイディ。
ショッピングモールで母親を思い出し、おもちゃの家に閉じこもってしまったドーン。
何気ないエピソードが続くのだが、その積み重ねにより、ラスト近くの海で抱き合う3人の気持ちが痛いほど伝わってくる。
本当につらいことや悲しいことは、人に伝えられるまで時間がかかる。それは伝える者自身がまだその感情を整理しきれていないからだ。浮かんでくる言葉はどれも口にすることをためらわれるし、口に出したとたんに陳腐なものに成り果ててしまう。だからこそ、本当の言葉が出てくるまで、自分の心と向き合うことが大切なのだと思う。
私にももう10年以上言葉に出せないつらく悲しい出来事があった。今もまだ口にすることは出来ない。今はまだこの世に数多くある「つらく悲しい出来事」としてラベルを貼っておくことしか出来ないのだ。いつか時間が私にそれを語らせることが出来るのだろうか。