マグノリア コレクターズ・エディション [DVD]

マグノリア コレクターズ・エディション [DVD]

アダム・サンドラー → パンチ・ドランク・ラブ → ポール・トーマス・アンダーソン
2000年のベスト映画であり、いまだ私の中で傑作となっているマグノリア
まず、群像劇という時点で十分なのだが、それを抜きにしても最高。
エイミー・マンの曲にあわせたオープニングのかっこよさに、これから始まる物語の良さを予感した。
そして、ひとりひとりの抱えるその重さ。特にその時期の私の情緒が不安定であったことも手伝って、どんどんと彼らの話にのめりこんでいってしまった。まるで私が彼らのようにつらい現実に直面しているかのように。
彼らはそれぞれ、かなりの闇を抱えている。だれにも理解されない、そしてとても自分では解決することができない。彼らは行き詰まる。どうにも出来ない現実の前に、どうすることも出来ない小さな自分の前に。そして見ている私の胸もつぶれてしまいそうなほどに。
しかし、その絶頂で神様からの贈り物が空から降ってくる。
彼らはそれぞれ違った状況ではあるのだが、みな同じ夜に行き詰まり、途方にくれていた。
そんな時、空からおびただしい数の雨、ではなく贈り物が降ってくる。果てしなく、何の前触れもなく。
この贈り物自体がこの世の中でもっとも苦手な私。しかし、この雨に心救われることになった。
贈り物が降ってきたそのとき『!?』と普通に驚いたのだが、途端に何もかもがすこしおかしくなってきてしまった。
人生の中では辛いこともある。辛いことばかりかもしれない。だけど人々はそれを何とか自分の力で乗り越えて行こうと、努力している。しかし、時に人生は残酷で自分だけの努力ではどうにもならない局面を迎えてしまうこともある。
人の数だけ解決法というものはあるのだろうが、そんな時人の心を救ってくれるのはほんの些細な日常のおかしな出来事ではないのだろうか。自分は何をそんなに悩んでいたのであろうと思わせてくれるような出来事。普段の生活の中では気づかないほどの些細な出来事。しかし、そこに目を向けたとき、重い雲が垂れ込めていた自分の頭上からわずかな青空がのぞきだすのです。『ひとりで考えていたってしょうがない、もっと気楽にやっていこう』と思うことが出来る。その瞬間に問題は解決へと歩み始めている。
その頃の私は、彼との同居の日々に疲れ果て、彼を責めることしか頭の中になかった。どうして自分の気持ちを理解してもらえないのか。一緒にいたいから暮らし始めた私たちなのに、それぞれにこの先どうしていったらよいのかすでに分からなくなっていた。その日の朝もただ私はキッチンでひとり泣くだけで、私が泣いているのを知っていても彼は隣の部屋から出てこようとはしなかった。
その日私はこの映画をみながら『帰ったら、もう別れ話をするしかない』と思っていた。しかし、この贈り物の雨のシーンを見た後、『もう少しこの人と頑張る事ができるかもしれない』と思うことが出来てしまった。結局延命されただけだったのだが。
だけど、この映画と出会えたことにより、私は人生に対して肩の力を抜くことが出来たような気がした。3時間を超える大作ではあるが、私は劇場でみじんも長さを感じなかった。本当に私の中では傑作としか形容できない。
しかし、残念ながらこの雨のシーンに自分が耐えられる自信が今のところないので、観賞したのはこの劇場での1回のみ。