歯列矯正のことも忘れて私は恋に落ち、貯めておいた結婚資金を使い結婚した。
そしてこの結婚式が、私の歯列矯正を本格化させたのだ。私たちはうかれていて、披露宴で自分たちのVTRを流すという余興を行った。
通常結婚式でしか会わない程度の関係ならば、新婦は遠い場所にいてキャンドルサービスなどで少し近づく程度だ。だけれど、私たちはVTRを流してしまった。VTRにはもちろん私のがたがたの歯並びが映し出されていた。
披露宴に出席していた歯科医師と歯科技工士は私の歯並びを見て、ほうっておけなかったそうだ。「ここまでひどいのに」と思ったらしい。
そうしてあれよあれよというまに、私はその歯科医師と歯科技工士のもと、歯列矯正をはじめることになった。そのときはもう「どうする?」という選択肢はなくなっていた。すでに「いつからやる?」という選択肢にすりかわっていた。
私も覚悟を決めて「さあ、いつでもギラギラの器具をつけてやる」と意気込んだ。
しかし、歯列矯正といって思い出すあのギラギラの器具はその気になったからといってすぐにつけてもらえるわけではなかった。
1〜2ヶ月程度の準備期間のはじまりだった。