私が映画を見る理由

こんなに映画が好きになったのはいつからだろう。
子供の頃は、よく大人に連れられて映画館に行った。そのころは2本立てが主流だった。立ち見もよくあった。
高校生の時も、そこそこは関心があったがクラスの映画マニアと自分はなんだか違う気がしていた。


と、考えていたらやっぱり20歳頃からではないかと思った。
社会人になって自分のお金と自分の時間を手に入れた。
だけど、私は彼氏が出来ると世界が全部彼氏時間にされてしまうので、なかなか自分の時間を持てずにいた。
そして20歳の冬、別れを迎えた。


楽しかった。一人でいることは、こんなにも自由でこんなにも可能性に満ちているのかと思うと、なぜ今まで男の人なんかにとらわれていたのかとその時間を悔やんだ。
ここで、もともとあった「映画が好き」という資質に火がついたのだ。
残業のあとに、B級映画のレイトショーにかけつけたりと、一人で映画を見に行けるようになったことはその後の人生を大きく広げた。
友達なんかもよく言うのだが「一人で映画館なんていけない」と。
それは多分「映画にいくような相手もいない」と思われるのがいやなんだろうけど(違う理由もあるのかしら?)私にしてみれば「一緒に行く相手なんか探していたら見たい映画も見られない」という気持ちになるのだが。


その頃見に行った映画で、今も強烈な印象を残しているのが「エンドレスワルツ」だ。
29歳の若さでこの世を去った天才サックスプレイヤー・阿部薫と、彼の妻で小説家・鈴木いづみとの激しい愛を、町田町蔵町田康)と広田玲央名が演じきった名作である。
こういった素晴らしい映画との出会いが、ますます私をのめりこませていった。


映画は、人生の復習も予習もさせてくれる。
あの時の気持ち、これからの気持ち。
見てきた風景、まだ見ぬ風景。
見たときにとても理解できる映画もある、そのときは全く理解できなくて何年か後にふっと思い出したようにするすると理解できる映画もある。
映画は私の人生を何倍にも広げてくれたと思う。
私なんてちっぽけな人間でも、こんなところまで連れてきてくれたのは、映画と本のおかげだと思う。


これからも、人生、という、戦場、を生き、ていくために、私は、映画を、見る。