映画日記

ヴェロニカ・ゲリン

ヴェロニカ・ゲリン 特別版 [DVD]

ヴェロニカ・ゲリン 特別版 [DVD]

想像通り、見終わった後にいろんなことを考えた。独身時代に見ていたら、今の感想とは全然違っていたと思う。ヴェロニカは、真のジャーナリストであり続けることを望んだ。新聞にのる自分の記事が意味のあるものであるように、そのことを強く考えていた。だけれどその代償は大きすぎるものだった。家族をあんなに不安にさせてまで、貫き通したいものが私にはない。家族のあんな顔を見ても、それでも自分の信じるもののために進むことが出来る人なんてどれくらいいるだろうか。
ヴェロニカのもとに脅迫の電話が入る「お前の息子を誘拐して犯す、お前も殺す」と。あまりの恐怖と不安で吐くヴェロニカ。かけつけた夫の腕の中で、涙でぐちゃぐちゃになりながらそれでも「私が怯えていることをだれにも言わないで」と懇願する。その姿に私の涙も止まらなかった。正しいことを行いたいだけなのに、壁はあまりにも高すぎて、それに挑む人への代償はあまりにも大きい。そんなのまったく理不尽だ。平和な日本で恐怖なんてほとんど感じず暮らしている私の言葉はただの理想だ。きれいな言葉が意味を持たない場所がこの世界にはたくさんある。だけど、何もしなかったら何も変わらないのだ。ヴェロニカの死は、大きなものを動かした。死ななければ変わらなかったのか、起こっていないことは我々にはわからない。だけど、人の死を無駄にしないことは、残された者たちに与えられた使命なのだろう。
クリスマスの前にはディッケンズの「クリスマスカロル」をいつも読み返す。最後のページを読むために、全部を読み返す。今、なぜかそのことを思い出す。
笑われるのを恐れずに、我々は正しい道を歩むのだ。