音楽日記

「Runaway Love」 Ludacris ft. Mary J. Blige

私たちのすむ世界には、光と闇がある。闇の中でもがけばもがくほど、光ははるか遠くの幻想となる。
この曲の意味を知ったとき、すーっと血の気がひいたような感じがした。私の想像をはるかに超えた闇が確実に存在し、今もその闇の中で誰かが声を殺して泣いているのだ。
10歳前後の子供たちにとって、麻薬中毒の母親や、虐待する父親や、大事なところで逃げてしまうボーイフレンドがいるような世界は地獄だ。世界を変える力を持たない子供たちは、ただカバンに服をつめて、その世界を飛び出す。新しい世界がどんなものかもわからずに。
私も家を半分捨ててきた。だけど、私はそのときすでに大人で、自分ひとりで生活する経済力も精神力も備えていた。だけど、もし私が10歳だったら?きっと私の人生は今よりずっと過酷なものになっただろうし、私はそれに耐えられるようなタフな子供ではなかった。想像することすら恐怖だ。
曲が進むほどに胸はしめつけられ、最後のLudacrisの言葉も、きれいごとにしか聞こえなくなってくる。だけど、彼女たちの闇を本当に理解することが出来ない私に、一体何が言えるだろう。結局、私もLudacrisと同じことしか言えないのだ。絶望的な気持ちの中、それでも生きていくために、私たちは光を信じる。どれほど遠くて、今はそのかけらすら見えなくても。