映画日記

「L.A. Without a Map」

本当に、恋愛とは不思議な行為だと思う。私が結婚をしてよかったなぁと思うことのひとつに、「もう恋愛をしなくていい」という項目があげられる。夫を好きではないということでは全然なくて、我々はもう、ひとつの共同体として存在しているので、「恋愛」のように個と個をぶつかりあわせる必要がなくなっているのである。
人を好きになるという行為は、とても暴力的な面も含んでいる。だからこそ、この世界は男女間(またはそれ以外)のいざこざで満ち溢れている。
バーバラがリチャードに問いかける、「本当に私のこと考えてくれたことある?あなたはいつも嫉妬ばかりで、まるで子供だわ」というセリフは「恋愛」のすべてを象徴しているようだと思う。「恋をしている自分」に酔ってしまい、相手を理想化するあまり、恋愛はわりと早く行き詰ってしまう。それに生活がからめばなおさらだ。
夢のような空間で、限られた時間だけ恋をするなら、それは永遠に続くかもしれない。だけど、恋する欲望がそんなふうに抑えられるわけはない。もっと会いたい、もっと知りたい、もっと、もっと、もっと。恋する欲望に飲み込まれ、自分が泳ぐことに精一杯になってしまうと、相手の気持ちがときに見えなくなってしまう。自分の都合ばかりで相手を批判してしまう。「恋愛」は本当に誰もが自分勝手になってしまう行為なのだ。
だけど、その行為が奇跡的につながりあった瞬間、我々は圧倒的な幸福の光に包まれる。その瞬間を求め続け、人は人を愛すのだろう。