DVD映画日記

「ONCE」

見る前から、絶対私は好きな映画なんだろうと思っていた。予感は的中というか、それをはるかに超えていた。最初から最後まで私はぐっときてばかりで、最後など涙が流れっぱなしだった。それは、悲しくてとか切なくてとかではなくて、幸せな記憶を呼び戻すスイッチをずっと押されていたということなのかもしれない。
人生の中には、さまざまな出会いがある。そして、もちろんその中には奇跡的な出会いというものがある。本当に予想もしなかったときに、人は人と奇跡的に出会う。そして、その出会うタイミングは誰にも選ぶことが出来ない。
大人になってしまうと、自分で自分に歯止めをかけることが出来るようになる。何も考えずにその渦中に飛び込むことへの欲求と、その後に自分自身で取らなければいけない責任とを天秤にかけることが出来るようになってしまう。それは悲しいことであるようだが、必要なことでもあるように思える。
素晴らしい出会いがある。今まで誰もわかってくれなかった自分をまるごと理解してくれるような相手に。だけれども、自分にはあまり自分の全部を理解しているとは思えないパートナーがいる。自分を理解してくれる新しいその誰かと自分は親密になるにはあまりにもリスクが大きい。自分とその新しい誰かが親密になるためには、二人とも全てをすてる覚悟をしなければいけないくらいに。だけど、自分とその誰かはお互いにはっきりと分かっている。「我々はパーフェクトだ」と。そして、二人はお互いがそのことを理解していることで全てを完結させることができる。続けることに、意味はない。
この映画の中で、録音を終えたメンバーたちが海辺でただ遊ぶシーンがある。そのシーンはまさに、この映画を象徴しているようであった。すべての人が完璧な幸せに包まれながら、この幸せには必ず終わりがあることを知っていた。終わることを知りながら、その幸せを体中に染み込ませていく。この先、何度でもその幸せの記憶を取り出すことができるように、その幸せの記憶が消えてしまわないように。
見終わった今、さっそくiTunesで2曲購入してしまった。そして、今も"Falling Slowly"を聴いている。アカデミー賞の授賞式で、この曲を歌う二人が本当に素敵だったのでこの映画をなんとしても見ようと思った。映画を見ているときに、アカデミー賞ではにかみながらステージにたった二人のうれしそうな姿を思い出して、また涙した。
本当に素晴らしい映画でした。ありがとう。